愉悦の蒐集 ヴンダーカンマーの謎 (集英社新書ヴィジュアル版):小宮 正安(著)

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男子たるものは子供の頃、意味のないガラクタを単なる興味本位から訳もなく集め、無駄に部屋に陳列してみたりしたことがあるとおもう。昔の貴族も同じく、広い世界の珍しいもの達を一つの部屋に押しこめ、陳列し、一室に展示して奇妙な空間を形成していた様で、本書にはそれらの様子が事細かに記載されている。骨、貝殻、石、書物に彫像、剥製、天球儀、奇妙な椅子などの家具や拷問具などなど、それらを集めた部屋はひとつの小宇宙を形成している。

この本を読む前から、そうした興味のない人達からしたらガラクタ的な「奇妙なもの」に取り憑かれていた私が、ことさらガラクタ収集を始めてしまう程にこの本は面白く、そして興味深いものでした。
澁澤龍彦氏の書斎や、氏の翻訳したJ.K.ユイスマンスの『さかしま』の主人公デ・ゼッサントが夢見たような、美と廃頽の「人工楽園」を形成した自室を構築したい!と考えている方々には必須の一冊。イラストや写真も豊富に掲載されているので、興奮すること請け合い。

内容(「BOOK」データベースより)
博物館の元祖であるヴンダーカンマー(不思議の部屋)は、一六~一八世紀ヨーロッパで盛んに造られた。そこにはいわゆる美術品、貴重品の他に、一角獣の角、人相の浮かび上がった石など珍奇で怪しげな品々が膨大に陳列されていた。それは、この世界を丸ごと捉えようとしたルネサンス的な一切智、万能主義のあり方を示しており、今日の細分化された学問の対極にあるともいえる。本書は、ヴンダーカンマーを再発見し、かつての愉悦に充ちた知を取り戻そうとする試みである。本邦初公開の珍しい写真・図版等を多数掲載する。