『パフューム ある人殺しの物語』映画レビュー

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

007のスカイフォールでQを演じた、ベン・ウィショーの出世作!

内容(「キネマ旬報社」データベースより)
パトリック・ジュースキントの小説を元に、類稀なる嗅覚を持つ男の才能と狂気を描いたサスペンス。孤児のグルヌイユは生まれ持った抜群の嗅覚を活かして調香師となるが、時を同じくして猟奇殺人事件が発生し…。

パトリック・ジュースキントの小説『香水―ある人殺しの物語』を映画化したもの。

冒頭、それはそれは汚らしいパリの映像。小説と同様に、映像を観ながらそのなんとも言えない悪臭を、鼻先に感じるような錯覚にとらわれた。そのパリの不潔な市場で、まるで大便のように産み落とされた主人公”ジャン=バティスト・グルヌイユ”を演じたのは、イギリス人の俳優”ベン・ウィショー”である。どことなく永瀬正敏の様なサル顔であるのだが、なかなか魅力的な俳優。彼は2012年に『007 スカイフォール』で、ジェームズ・ボンドを支える”Q”を演じた期待の若手である。

グルヌイユは生まれながらにして常人をはるかに凌ぐ鼻の良さを持ち、あるとき若い女性の体臭にこの上ない興味を持って、その女性をうっかり殺してしまう。その女性の香りを忘れられない彼はやがて、紆余曲折を経て天職とも云える”調香師”になる。グルヌイユは究極の香りを作る為に…。

小説よりはマシだったが、全体的に淡々と進行(しかもちょっと長い)してゆくので、割りと退屈してしまうかもしれない。確かに冒頭で映ったパリの不潔な様子などは、小説の表現を見事に映像化できているように思うのだが、兎に角、香りにしか興味が無いグルヌイユの生き様を長々と見せられたところで、感情移入のしようがないではないか。

圧巻のラストに関しては何も言うまい。だが、このように具現化されてしまったことであり得なさが強調されてしまい、元々バカバカしかったシーンが更にバカバカしく思えてしまった。

小説と何ら変わりなく、ベン・ウィショーも良い演技をし、とても丁寧に制作されたことはよくわかるのだが、香水の香りに好き好きに個人差があるように、私の肌にはちょっと合わなかったようだ。