『ストレイト・ストーリー』映画レビュー

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リチャード・ファーンズワースの名演技が光る!デヴィッド・リンチらしからぬ出来の、たいへん静かで真っ直ぐな感動作品!

あのデヴィッド・リンチが生んだ感動作品『ストレイト・ストーリー』の一コマ

デヴィッド・リンチが監督なのに、異形の人間も出てこないし、リチャード・ファーンズワース演じる主人公のアルヴィン・ストレイトも、理不尽で悲惨な目には合わない。これのどこがリンチ作品なんだろう…と思いながらみてみると、冒頭のなんだか妖しい景色や、中盤に登場する短い期間に何度も鹿を轢き殺してしまう女性、死んだ鹿を食べて、角をトラクターの荷台に飾るアルヴィン、その後の下り坂におけるやり過ぎっぽいスピード感を観て納得。やっぱりリンチだ、と。

台詞が少なく、間を大切にしているので、映画全体がとても静かである。まるでこの映画の田舎道の田園風景のように。台詞を削っているので飛び出す言葉に少々作為的な重さを込めたものが続くのだが、年齢を重ねてきた老人から出てくる言葉ということもあって、気にはならない。

アルヴィンの娘で軽い知的障害を持つ娘を演じたシシー・スペイセクも見事であり、冒頭の対話や中盤の電話を通して、アルヴィンとの深い絆を充分に感じ取ることができた。

そして何よりもリチャード・ファーンズワースの表情。彼の演技なくしてこの映画はあり得ない。彼は末期がんを苦にして、本作が公開された翌年に自ら命を絶ってしまうのだが、とても複雑な気持ちになる。兄が倒れたことを聞いた時の表情や、兄との再開が近づいて自然に心が踊る様子、そしてラストシーンの表情は、特に見ものでした。

Amazon.co.jp 内容紹介より
異色の感動作&話題の衝撃作がリストア版で甦る!
鬼才デイヴィッド・リンチの傑作!!
シンプルな人間ドラマに挑み、世界中を涙で包んだ感動作!

ストーリー
アメリカ・アイオワ州ローレンスに住む73歳のガンコな老人アルヴィン・ストレイト。ある日、彼のもとに、76歳の兄が心臓発作で倒れたという知らせが入る。10年来仲違いをしていた兄に会うため、アルヴィンは周囲の反対を押し切り、たったひとりで旅に出ることを決意する、時速8kmのトラクターに乗って…